国特別天然記念物ニホンライチョウの生息数が激減していた南アルプス北岳(山梨県、3193メートル)周辺で今夏、推定生息数が58羽と、3年前(23羽)の2・5倍に増えたことが21日、環境省の調査で分かった。同省は、致死率の高いひなをケージで一時保護する取り組みや、天敵のテンやキツネを捕獲する試みの効果とみている。減少が進むほかの生息地でも同様の方法の活用を検討する。
同省の委託を受け、現地で調査や保護に取り組む信州大の中村浩志名誉教授(鳥類生態学)らが6〜7月、繁殖期につがいが一定範囲で生活する「なわばり」の数を、北岳やその南にある間ノ岳、農鳥(のうとり)小屋の一帯で調べた。ライチョウの個体自体のほか羽やふんなどの痕跡から、23のなわばりを確認。生息数は58羽と推定した。
中村名誉教授によると、一帯で初めてライチョウの生息状況を調査した1981(昭和56)年に確認したなわばり数は63だった。2004年の調査では19に激減。15年は9しか見つからず、生息数は23羽と推定されていた。このため同省は15年、北岳周辺でふ化したばかりのひなを一定期間ケージで保護する取り組みを開始。昨年はテンやキツネの試験捕獲も始めた。
今夏の調査では、生息数の回復のほか、ケージで一時保護されたひなが自然の中で成長し、子どもをつくったことも確認された。中村名誉教授は「(ケージ保護などが)減少が進む生息地での保護策として確立できた」と自信を深める。
環境省信越自然環境事務所(長野市)の福田真・希少生物係長も「これほど短期間で生息数が回復した希少動物保護の取り組みは、世界的にも珍しい」と評価。同様に生息数が減少している火打山(新潟県)などを想定し、「ほかの生息地でも保護策の参考にしたい」としている。