北アルプス乗鞍岳(松本市、岐阜県高山市)の噴火対策を話し合う乗鞍岳火山防災協議会(事務局・県松本地方事務所など)は14日、乗鞍岳の火山ハザードマップ(災害予測地図)を公表した。最高峰の剣ケ峰(3026メートル)周辺を火口とし、マグマ噴火だと半径4キロ以内、水蒸気噴火だと同1キロ以内に大きな噴石が落下すると想定。火砕流や火山灰は長野側の麓の乗鞍高原にあるスキー場付近などにも到達すると見込んだ。
同日、高山市内で開いた会合で案を示し、了承された。協議会は今後、ハザードマップを住民らに説明する一方、避難計画作りに着手する。
協議会事務局は「過去1万年に発生した最大級の噴火を基にシミュレーションした。影響範囲も最大のものを想定しており、噴火の際に必ず生じる影響ではない」と説明。出席した及川輝樹・気象庁火山課調査官は「乗鞍岳は現在、活動を活発化させる兆しはない」とした。
協議会は過去の噴火の傾向から、次の噴火も剣ケ峰周辺の可能性が大きいと判断。マップでは火口から大きな噴石が飛ぶ範囲や、火山灰が降る範囲(半径7キロ)のほか、溶岩流や火砕流、熱風などで構成される「火砕サージ」が流れ下る範囲を想定した。
マップによると、長野、岐阜両県側からバスが運行する山頂近くの畳平(高山市)は火口から半径1キロ余りの場所にあるため、マグマ噴火の場合は大きな噴石が落ちる可能性がある。長野側麓の乗鞍高原のスキー場「Mt.乗鞍スノーリゾート」付近は火砕流が流れ、乗鞍観光センター周辺は火山灰が降る恐れがある。9200年前のマグマ噴火で噴出した火山灰の堆積場所も示した。
協議会は昨年、山頂など142カ所で火山灰の層を調べ、過去1万年に少なくとも11回の噴火があったと判明。いずれも火口は剣ケ峰周辺で、このうち水蒸気噴火は8〜9回。最も新しい噴火は現在から500年前以降に起きたことも確認した。
乗鞍岳は、気象庁が指定する全国50の常時観測火山の一つだが、他の火山より静穏なため5段階の噴火警戒レベルを運用する38火山には含まれていない。協議会は長野、岐阜両県や両県の関係機関で構成する。