伊那市長谷の浦地区で採取されたとみられるソバの在来種の復活を目指す「信州そば発祥の地伊那そば振興会」などは22日、同地区の畑でこの在来種の種をまいた。2016年から続けて年々、収穫量が安定し、昨年初めてそば店で販売した。今年は栽培面積をさらに広げる予定で、品質管理などを徹底して安定した供給態勢を目指す。
振興会の有志が14年、県内の農業関連施設で在来種特有の小粒なソバを発見したことが活動のきっかけ。浦地区で採取された可能性が高く、長谷と高遠町の一部を指す地名にちなみ「入野谷(いりのや)在来」と呼ぶ。ソバに詳しい信州大名誉教授の井上直人さん(67)によると、在来種は粒が小さく、木の実のような香りが特徴。「冷たい風と適度な湿気がある標高の高い地域が栽培に適している」という。
長谷のソバ農家らでつくる「入野谷そば振興会」が中心に栽培を担っており、昨年は浦、杉島、市野瀬の3地区で計約650キロを収穫。今年は、中尾、黒河内地区にも広げる予定だ。
この日は伊那そば振興会のメンバーら計約20人が参加。約10アールの畑に80センチ間隔で畝を作り、約800グラムの種をまいた。順調に育てば10月中旬ごろに収穫できる見通し。入野谷そば振興会の小松正樹会長(70)は「年々、収量も安定してきた。種の大きさをそろえるなど品質の管理にもこだわり、ブランド力を高めたい」と話していた。
写真説明:浦地区の畑であった在来種の種まき作業