松本平の遊休農地を活用してソバを栽培する松本市の農業生産法人「かまくらや」と、同市のそば店「蕎麦(そば)倶楽部佐々木」が今年、麻績村の在来種のソバ栽培を始めた。小粒で収量の少ない在来種は消えゆく昨今。同市四賀の農地2ヘクタールで1・2トンの収穫を見込む。11月の四賀そば祭りでも振る舞う予定で、地域で食べ続けられてきた香り高いソバを伝えていく。
佐々木店主の佐々木文宣さん(56)によると、店を開いた2006年当時は週替わりで県内各地の在来種のそばを提供し、好評だったが、近年は農家の経営安定のため品種改良され、大粒で収量の多いソバが普及。在来種と改良種が自然交配を繰り返したこともあり、地域ならではのソバを仕入れることが難しくなってきたという。
佐々木さんは、かまくらや社長の田中浩二さん(56)と10年前にも四賀で在来種栽培に挑戦したが、シカの食害で断念。その後、獣害を防ぐ柵の設置が進んだことなどから、「在来種を守っていくことは生産者の使命でもある」(田中さん)と、再び栽培に挑戦することにした。
今年は四賀の赤怒田(あかぬた)地区にある標高900メートルほどの土地2ヘクタールを借り、佐々木さんが地元農家らに依頼して耕作をつないできた麻績村産の種120キロを7月末にまいた。かまくらやが他地域で作る主流の「キタワセソバ」に比べて一回り小さいのが特徴。収穫時期は10月半ば。11月2、3日に開かれる「四賀新そば祭り」でも1日300食限定で提供する予定といい、佐々木さんは「一人でも多くの人に食べてもらい、信州のそばっておいしいと再確認してもらいたい」と期待している。
写真説明:花が咲き始めた麻績村の在来種ソバと田中さん(左)、佐々木さん=松本市四賀