茅野商工会議所などでつくる「寒晒し蕎麦(かんざらしそば)復活再生推進会議」が地元名産にしようと取り組んでいる寒ざらしそばについて、信大農学部(南箕輪村)の井上直人教授(植物栄養学)が品質分析した結果がまとまった。通常のソバに比べ、高血圧に効果があるとされるアミノ酸の一種「GABA(ギャバ)」が増え、でんぷんの消化速度が増して満腹感を得やすい―などの特長が分かった。
江戸時代に将軍家に献上されていた寒ざらしそばは、厳寒期にソバの実を清流に浸した後、屋外で寒風にさらして凍結・乾燥させて作る。「あくが抜け、品質が劣化しない」「腹持ちがよい」といった長所があるとされている。
昨年6月に発足した同会議が、寒ざらしそばの特長を科学的に解明しようと、井上教授に分析を依頼。井上教授は茅野市で寒ざらしされたソバの実を調べた。
井上教授によると、当初100グラム当たり3・09ミリグラムだったGABAは、寒ざらし後に8・25ミリグラムと2・7倍に増加。「ソバの種子は一定の温度以上になると、発芽の準備としてタンパク質などの貯蔵養分の分解を始め、アミノ酸が生まれる」という。水揚げ後に温度が上下する環境にさらしたことで、発芽の準備が繰り返されたとみられる。
でんぷんの消化速度は寒ざらし後の方が23%速くなることを確認した。消化速度が上がると血糖値の上昇も速まるため、満腹感が得られやすい―と推察している。また、酵素の作用ででんぷんの粘性が低下しにくくなり、冷めても粘りが強く、「もちもちした食感」になるとみている。
井上教授は「昔からの寒ざらしに対する評価が、化学などの見地から裏付けられた」と話している。