大町市の西、高瀬川の南に位置し、市郊外の田園地帯からいきなり立ち上がる山である。
市街地から見ると、山の側面(東)はけっこう急勾配だ。全体に主尾根の上縁がごつごつしているものの、牛が伏せたような南北に長い姿である。このような里山の宿命で、その後方(西)にある北アルプスの餓鬼岳や唐沢岳と重なってしまって見映えがしない。
ところが、安曇野市明科、豊科地区から望むと、高さこそ西の高山と比すべくもないが、すっきりした秀麗な鋭鋒に姿を変える。松本市四賀地区の虚空蔵山と競うことができる変身ぶりだ。つまり、山は見る方角によってこうも違うのかという典型である。
かろうじて亜高帯に入る高さの山だが、登りはじめて30分もするとシャクナゲが目につきはじめ、それは主尾根と頂上付近まで群落している。市街地に近く、この高さでシャクナゲが楽しめる貴重な山である。
JR大糸線の信濃常盤駅(餓鬼岳登山口の道標がある)から西へ進み、神明原集落をぬけて開発地の広い道路を横切り奥へ。二分の道(餓鬼岳への指導標あり)を右へ。乳川沿いで再び餓鬼岳への分岐。右へ進んで「唐子山の神」。さらに奥へ進んで右手からの小沢を渡ってすぐの右山側に「高瀬川線NO.18」のプラスチック柱があり入山口だ。この道はあと約100メートルで行き止まり。入山口のわずか奥左側(谷側)に数台駐車できる。入山口から階段の埋まった尾根をやや急登ののち送電線鉄塔。露岩のある尾根を登り、やや急登が終わると主尾根。前方の岩峰は右を巻き登り切ると頂上の南のピーク。わずか下ってゆるい登りでけっこう広い頂上。入山口から約2時間半。
シャクナゲの山である。とはいえ日本には10種ほどあって判別が難しいが、ここは淡紅色の美しいツクシシャクナゲといわれている。むろんナナカマドやヤマツツジも混生している。頂上は大展望で、大町市街地から南へ延びる安曇野の平野が見事だ。北西は至近に北アの蓮華岳。その左うしろに三角形の針ノ木岳がのぞき、左に北葛岳から裏銀座北部の山々が連なっている。眼下にロックフィルダムの七倉ダムが全貌をさらしている。
大町市のすぐ南隣りにある北安曇郡松川村に「馬羅尾天狗岩温泉すずむし荘」。至近に「安曇野ちひろ美術館」もありおすすめする。