2000メートルを超す高さがありながら、ほとんどの登山者は目もくれない不遇な山である。北隣りに信州百名山のひとつでもある入笠山が、南に釜無川をはさんで同じく鋸岳と甲斐駒ヶ岳という有名な山がひかえているためであろうか。
反面、有名ではない山というのは登山者に会うこともめったにない。道標もあるかないかで、野性味が保たれていて興味深い。この山こそ、仮に信州百無名山をかぞえるとしたら、標高からしてもその筆頭格と思われる。
北のツンとした入笠山の南に目を転じれば、準平原的に山地が南へのびている。その山地はわずかながら標高をあげていくが、釜無川へがくんと落ちる山地末端の白岩山(2267メートル)の手前にあり、ピークを特定することすら困難な山である。
諏訪郡富士見町と伊那市長谷の境にあるたおやかな山で、静寂な亜高山帯の山を好む向きには好適な山といってよい。
JR中央本線富士見駅のわずか北から、国道20号線と別れた道路が入笠山方面に上っている。上り切ってTの字の正面が大阿原湿原。右折すると入笠山で、左が林道釜無山線。林道を進み、右(西)の長谷村方面への3つ目の林道分岐に道標。林道を左下にはずして目前の2003メートルピークの右を巻いていく。こぐようなササ原をぬけると草地混りとなり、南北に長く広い頂上となる。湿原入口Tの字に駐車場あり。入口から約2時間。
大阿原湿原はミズゴケとモウセンゴケの群落にクガイソウ、ヤマハハコ、ウメバチソウ、ヤナギランなどの高山植物がみられる。釜無山登山の帰りのみやげにぜひ見学を。
釜無山の北東山ろくに、釜無川と支流武智川にはさまれた武智鉱泉。