上伊那郡飯島町と下伊那郡松川町のほぼ境にある山で、中央アルプス南部の奥念丈岳から東の伊那谷へ尾根をのばす末端近くが烏帽子ヶ岳。末端が小八郎岳である。
全国には烏帽子岳と烏帽子山をあわせて85という説があるが、これは同名山ランクで4番目である。信州にも北アの烏帽子岳や浅間連峰の烏帽子岳など、ごく烏帽子型をした2000メートルを越す山があるが、この山の烏帽子型はその最たるものと思われる。しかも、平地からでもはっきりそう見える。
すなわち、中央道を南から信州に入り、飯田ICをすぎて次の松川ICに近づけば、左(西)の上空にこれぞ烏帽子という姿を容易にみつけることができるからである。それは2500メートルを越える高山であるかのような風格を漂わせている。
一方の小八郎岳を烏帽子ヶ岳の支峰と言ってしまえばそれまでだが、地形図上の頂上にれっきとした記念碑記号が書きこまれている由緒ある独立峰である。
記念碑は自然石に「片桐小八郎之霊」と刻まれた立派なもので、保元の乱(1156年)で源頼朝の父義朝に従い勇名を駆せたが、次の平治の乱(1159年)で戦死したこの地の武将片切小八郎大夫景重(昔の正式名)が、避暑のために夏の城として滞在した山である。
両山ともに伊那谷、伊那山脈、南アルプスの大展望台である。
松川ICの北、上片桐地区の中荒町から西へ中央道をくぐり、小八郎岳入山口の鳩打峠まで林道をゆく。峠は数台の駐車可。ほぼ真北へ尾根を登り、分岐から左折して烏帽子ヶ岳へ。直上して小八郎岳までは峠から約45分。
烏帽子ヶ岳へはスギ、カラマツに雑木が混生し、ササもけっこうあるが道はよい。下部から見る1603メートルの大きなピークを越えればセキナギという崩壊地を左にして1849メートルのセキナギの頭。そこからは尾根は細くなり、平均斜度30余度ほどの樹林帯の急登。頂上かと間違いやすい岩峰を2つ越して頂上。鳩打峠から早足で3時間、普通で4時間。
上部は針葉樹に覆われた烏帽子ヶ岳だが、頂上と2つの岩峰は林からぬきんでて高山帯をほうふつさせる。なんといっても東方の展望はすばらしく、南北に広がる伊那谷を眼下にしたむこうは、おびただしい山襞(ひだ)を無数につけた伊那山脈、その真東の背後は白峰3山を盟主にした南アルプスがある。
手前に小八郎岳、その左後方に烏帽子ヶ岳がくっきりと望める信州まつかわ温泉「清流苑」。両山の南にくいこむ渓谷片桐松川の右岸に建てられている。松川ICと前述中荒町との中間、中央道の西に近い。