松本市から西へ上高地へ向かう国道158号線。その谷間(島々谷)の奥に、穂高連峰と対比するように高く優美な姿で望める。
松本市安曇と岐阜県高山市丹生川町の境にある成層火山で、単一の山体ではなくいくつもの峰がほぼ南北に約5キロにわたって連なっている。乗鞍岳というよりも乗鞍火山群といったほうが分かりやすいかもしれない。
それらの連峰の間には火口湖や火山せき止め湖、火山原湖などが10指をこえて存在し、いかにも火山であることを物語ると同時に山頂部からの景観に変化を与えている。
そもそも乗鞍岳は「コニーデ型火山」ゆえに“女性的”といわれるが、山名の「乗鞍」はそのなだらさが馬の鞍に似ていることからの命名といわれる。また、山容のなだらかさは標高の高さと相まって、良質の雪の広大なスキー場を山ろくに展開させ、夏でさえ雪渓のスキーを楽しむ人も多い。
かつて宗教登山で開山した山であるが、長野・岐阜両県からの交通アクセスも発達した現在は、ファミリー登山やファミリースキーにも適した登山として人気が高い。
両県からのバスが標高約2,600メートルの畳平まで上がっているので、3,000メートルを超す山としては最も容易に頂上に立てる。
畳平から乗鞍神社や山荘、鶴ヶ池をへて富士見岳の車道を登る。コロナ観測所のある摩利支天岳の道と分かれて裾を巻いていくと肩の小屋(30分)。肩の小屋からハイマツ帯のジグザグ道を登って鞍部となり、頂上小屋をすぎると連峰中最高峰の剣ヶ峰頂上(1時間)。ほかのコースは一般的ではないので割愛する。
2,500メートル以上の高山帯にある位ヶ原や桔梗ヶ原はハイマツの群生が見事であり、そこをすみかとするライチョウ、ホシガラス、イワヒバリの鳥類に、エチゴウサギ、カモシカなども見られる。
亜高山帯まで下ってくるとさらに多くの鳥類が見られ宝庫といってもよい。また、7月から9月下旬までの長期間にわたって高山植物が咲き乱れる。室堂下、畳平、五ノ池周辺などはお花畑と化し、キバナシャクナゲ、ハクサンイチゲ、コマクサ、ヨツバシオガマ、アオノツガザクラ、タカネヤハズハハコ、ハクサンフウロ、トウヤクリンドウなど、枚挙にいとまがない。
北の穂高連峰と、南の巨峰御嶽山とのほぼ中間に位置し孤高を誇っているため、展望もまた格別な大パノラマが広がっている。
山ろくの鈴蘭地区にある湯けむり館ほか一帯の温泉郷。北東に白骨温泉郷。岐阜県側は焼岳と同じ。