信州百名山のひとつで、ひとによっては志賀高原のシンボルなどという向きもあるが、近年この山(正確には北にある裏岩菅山だが)ほど登山者をやきもきさせた山はない。
ご存知1998年冬季長野オリンピックの滑降競技場として、裏岩菅山の雑魚川へおちる1000メートル近い標高差の斜面が開発されかかったからである。結果は、これ以上の志賀高原の自然の損傷は不可となり、あやうく難を逃れたといってよいかもしれない。
下高井郡山ノ内町志賀高原を代表する山のひとつで、北の秋山郷を流れる中津川は上流で魚野川と雑魚川に分岐するが、その両川にはさまれた岩菅連峰とよばれる山脈の主峰といってよい。むろん裏岩菅山のほうが高いのだが、志賀高原の中心部から望めないこと、山頂部が特徴のない山容であること、「裏」が付いていかにも岩菅山の陰の存在のようであることから損をしている。
かつてこの山は岩巣護山といわれた。それは幕府に献上するタカの子、つまり巣を管理する巣守衆がいたからといわれる。タカがいればとうぜん山は険しく岩場があるとおり、山脈の東側(魚野川側)は玄武岩質の安山岩の岩壁などが露出している。
大正8年、ふもとの有志によって、山頂に24平方メートルほどの石室が建てられたほど愛されている名山である。現在も避難小屋として大切に使われている。
発哺温泉そばの東館山ゴンドラリフト駅広場に駐車しゴンドラに乗る。6分で山頂駅。高山植物園がある。道標にしたがい尾根を進み、寺小屋スキー場を左にみて登ると寺小屋山。尾根通し15分ほどで赤石山や大沼池方面への分岐となる金山沢の頭。樹林帯を進むと視界がひらけて正面に岩菅山が見えてくる。さらに小ピークを数回越し、草地となって再び小ピークを越すと、左から一の瀬コースと合流するノッキリ。はじめは緩いが岩や砂礫の斜面の急登となり、登り切って石祠や石碑などが立ちならぶ山頂。ゴンドラ駅から約3時間半。
ほかに一の瀬からノッキリ経由の約3時間のコースがあり、東館山コースから登って一の瀬へ下る案。一の瀬から登って東館山へ下る案などがある。なお、岩菅山から北へ裏岩菅山や烏帽子岳、笠法師山とこえて秋山郷切明へ縦走するコースもあるが、岩菅山から約8時間はかかるので熟達者向き。
コメツガ、トウヒなどの針葉樹にダケカンバが混生したり、シナノキンバイ、ガンコウラン、ハクサンコザクラなどの高山植物も豊富で登山者の目を楽しませてくれる。頂上の展望は遠く富士山や御嶽山はじめ北アルプスの全貌。天候に恵まれれば佐渡ヶ島さえ望むことができる。
入山口の発哺温泉はじめ志賀高原にはたくさんある。なお東館山高山植物園は3万坪で500種があるといわれるのでおすすめ。