あかるさん、と読める人はそう多くはないだろう。『日本山名総覧』(白山書房)の中に、日本難読山名一覧があり、長野県は赤椰岳(あかなぎだけ)、芥子望主山(けしぼうずやま)、簫ノ笛山(しょうのふえやま)など8つを数えるものの、不思議にもこの山はない。ともあれ、佐久市の北東を流れる香坂川の右岸に聳立する岩山である。
かつて訪れた徳富蘆花は、溶結凝灰岩の絶壁を「山の側面風水に擦破せられて、横に三、四丁、縦三、四百尺ほどが、山骨ことごとく露出す。遠く見れば、ただ一面に石の壁を立てたるように、近寄り見れば、斧もて一気に切り出したるごとき所あり。」と表現している。
なるほど、いまは松や雑木が繁って見えない部分こそあれ、東西約1キロにわたって聳えたつ岩壁群は霊山の趣きがある。じっさい、平安時代初期、天台宗山門派の祖円仁によって開基したとされる明泉寺が南山ろくにあり、宗教開山にふさわしい霊山といえよう。
明泉寺の壁には「摂政の宮(昭和天皇が成年に達しないとき)を迎えて閼伽流山、おやまますます花がさく」とうたわれた書がある。
明泉寺からわずか上の2丁目に車止めのゲートがあり、手前へ駐車(2、3台)できる。静かな林道を進み、7丁目付近で岩壁の下へ右折して11丁目に鐘楼、千手観音堂。堂裏の岩壁の切れ目を登り切り、右折して進んだ先端が12丁目の仙人ヶ岳頂上。戻るように北上し小沢に沿って緩斜面を進み、右の尾根をひろってわずかで三角点の頂上。ただし展望はない。車止めから約1時間半弱。
「摂政宮殿下御登臨之處」の石碑のある仙人ヶ岳からの展望。眼下には平安時代初期まで湖だったといわれる香坂川一円の谷が。西にやや遠く蓼科山の丸い頭。さらに南に八ヶ岳の主峰赤岳がとんがっている。
上信越道佐久ICから車で5分のところにあるホテル湯川温泉が至近。