
北の烏帽子岳を起点とした北ア・裏銀座コースは、終点の槍ヶ岳までおよそ25キロメートルあり、名の知れた10ほどの山は、南の樅沢岳(2,758メートル)をのぞき、すべて2,800メートル以上の標高がある。
その中で、南の鷲羽岳(2,924メートル)と同標高で最も高いのだが、茫洋とした山容と比較的らくに登れてしまうゆえに、歌手の名前と同じ野口五郎岳のほうが有名である。ちなみに、南西の黒部川源流よりさらに奥にある黒部五郎岳(2,840メートル・富山、岐阜県境)も同じ名前であることから、しばしば混同されるきらいがある。
さて、その名称について。全国に五郎の名のつく山は17座ほどあるが、むろんこの山が最高峰である。五郎は“ごおろ”または“ごーろ”のあて字で岩石によって山体の全部、あるいは目立つ部分がごろごろしているからといわれる。ともあれ、この山は長野県側の大町市野口集落から望める花崗岩質の石の多い山、というのが野口五郎岳命名の由縁といわれる。裏銀座コース中、最も大きな山である。
一般的には烏帽子小屋から縦走路を南下して、なだらかお花畑の起伏の道をすぎて三ツ岳(2,845メートル)の西峰南地点へ(1時間半)。岩尾根の登り下りののち二重山稜の間を通り野口五郎小屋(2時間強)。小屋から頂上へは約15分と近い。ほかは南の真砂岳方面からの縦走コースしかない。
裏銀座コース全般にいえることだが、およそ標高2,500メートルを下ることのない約25キロメートル続く県境尾根は、いかにも北アルプスの中心部を縦走しているという豪華な気分だ。
その全体の地質が花崗岩質のため、白い砂とハイマツのコントラストが美しく、三ツ岳手前のコマクサをはじめチングルマ、ウサギギクなどの高山植物が足元にゆれ、楽しい縦走を約束してくれる。
また、烏帽子小屋あたりでは望めなかった赤牛岳や水晶岳が、西下の黒部川支流東沢谷を越えて雄大に望まれるのも大きな見どころだ。
野口五郎岳の広々とした山頂は裏銀座コース中の最高点らしく大展望で、槍ヶ岳が左に急峻な北鎌尾根を、右にややなだらかな西鎌尾根をのばし圧巻である。なお、五郎池がひっそりとたたずんでいる南西のカール地形もこの山の特徴である。
前述した高山植物のほか、ハクサンイチゲ、シナノキンバイ、ミヤマキンポウゲ、ミヤマキンバイ、コケモモなどがある。
烏帽子岳と同じ。