信州山小屋ネット~朝日に染まる白銀の山々(大町市の山岳博物館から)

西駒山荘 荷下げ
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西駒山荘
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霧ケ峰
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涸沢
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あんぜん登山の最前線~雪山からの生還~(4)
2014/03/14 12:07
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<単独登山 落とし穴 「仲間と入山していれば…」>

 雪山では、経験豊かな登山者でも一瞬の気の緩みが重大な遭難につながる。2013年3月、単独で北アルプス鹿島槍ケ岳(2889メートル)を目指した飯田下伊那地方の建設業男性(48)は、北峰の北壁最下部(取り付き)にたどり着く寸前、雪に隠れた穴に行く手を阻まれた。

   ◇

 「ああ、やってしまった」。入山2日目の3月24日、緩やかな雪の斜面を下っていた時だった。目の前に迫る北壁の全容に目を奪われ、足元に気を配っていなかったという。雪の割れ目「シュルンド」に胸の辺りまで落ち、激痛が走った。

 右足首を捻挫したようだったが、携帯電話は通じず、救助を求めることはできなかった。所属する山岳会に提出した計画書は、25日が下山予定日、26日が予備日。救助が始まるのは3日先と予想されたが、食料や装備は十分だった。

 男性は落ち着いて次の行動を考え、登ってきた険しい雪の稜線(りょうせん)を戻るのは難しいと判断。計画書に避難路として記したカクネ里から大川沢を下ることにしたが、右足は踏ん張れない。荷物を降ろし、スコップで階段を作ってから荷物を取りに戻る作業を繰り返した。この日は1時間に300メートル進んだ。

 男性の登山歴は30年以上で、北アの白馬岳主稜、北鎌尾根など冬季の難ルートを単独で登った経験があった。パートナーを求めて10年に山岳会に入ったが、同レベルの登山を志向する人は少なく、その後も単独で登ることが多かった。

 「他人に頼らず、自分の力を最大限生かして厳しいルートを登り切る充実感がある」。鹿島槍ケ岳で遭難するまで、単独でちょっとした道迷いや滑落の経験はあったが、困難を自分の力で切り抜けてきたという自負があった。

 「何日かかるか分からないが、絶対に下る」と腹を据えた男性は25日、13時間半で約3キロ進んだ。26日も早朝に出発し、大町市の大谷原登山口にある駐車場まで200メートルに近づいたところで、上空に県警ヘリコプターが現れた。

   ◇

 男性が所属する山岳会は、入山日の23日を最後に男性から携帯電話でのメール連絡が途絶えたことに異変を感じ、25日に大町署に救助を要請。救助活動に備えて近隣の山岳団体にも連絡を入れるなど、大勢が奔走していた。

 十分な準備をし、危険が生じても知識と技術を駆使して自力で下山した男性。ただ、「仲間と入山していれば、こんなに迷惑は掛けなかった」と振り返る。この1年、単独登山を慎んで山に向き合う姿勢を再考している。

【高いリスク しっかり認識を 県警山岳遭難救助隊隊長・宮崎茂男さん(長野市)】

 飯田下伊那地方の男性が、雪山の危険を想定して装備などをしっかり整え、事故後も自力下山のために力を尽くした点は評価できる。その点は知識や技術が未熟な人による無謀な登山とは異なるが、いくら経験があって万全の準備をしていても、単独登山はリスクが高いということを示している。県内の山岳で、登山者が行方不明になる事例のほとんどが単独登山だ。厳しい山に挑戦することはそれぞれの自由であり、否定はしない。しかし、ひとたび遭難事故を起こすと、捜索が長期化することもあり、救助隊や心配してくれる親族、仲間に迷惑を掛ける。その点はしっかり認識してほしい。



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