信州山小屋ネット~朝日に染まる白銀の山々(大町市の山岳博物館から)

西駒山荘 荷下げ
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西駒山荘
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霧ケ峰
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涸沢
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あんぜん登山の最前線~雪山からの生還~(3)
2014/03/13 10:25
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<ホワイトアウト 天候悪化「あっという間」>

 2013年4月6日から7日にかけ、発達した低気圧が日本海側と太平洋側の沿岸をそれぞれ通過し、県内は大荒れの天気になった。

 長野市の会社員男性(39)は6日、雪山を自力で登って滑るバックカントリースノーボードをするため、仲間2人と北アルプス白馬乗鞍岳に出掛けた。初めての挑戦だったこの日、男性は吹雪で視界が利かなくなる「ホワイトアウト」に襲われ、7日まで1人で山中をさまようことになった。

     ◇

 男性はそれまで、スキー場でスノーボードを楽しんでいた。この10年ほどで人気が高まったバックカントリースキー、スノーボードには、仲間の話で興味を持ったという。「開放感のある自然の中で滑ってみたい」と、白馬乗鞍岳を目指すことになった。

 入山口がある北安曇郡小谷村の栂池高原スキー場に着いたのは、6日午前8時すぎ。「天気が悪くなるのは分かっていたので、状況を見て中止しようと話し合っていた」という。予想に反し、スキー場では時折晴れ間も見えた。

 「大丈夫」。バックカントリーの経験がある仲間の言葉で、ゴンドラに乗り込んだ。登り始めの標高約1830メートル地点に立っても、まだ汗ばむほどの陽気だった。バックカントリースキーヤーらが大勢訪れる白馬乗鞍岳はこの日も、「雪山にこんなに人がいるのか」と驚くほどだった。

    ◇

 「あっという間だった」。午前11時ごろ、標高約2200メートルの天狗原(てんぐはら)に着くと急に霧が湧いて風が強まった。15分ほど休憩しているうちに天候はさらに悪化し、視界は近くの木々が見える程度に狭まった。ホワイトアウトだった。

 3人は急いで同スキー場を目指して下山を始めたが、男性は滑走中に転んで遅れ、仲間からはぐれた。自分がいる位置が分からず、携帯電話で仲間に連絡。男性はその後も登ったり、下りたりを繰り返したという。仲間から救助要請された大町署は、男性に行動を控えてビバーク(露営)するよう指示した。

 ツェルト(簡易テント)を持っていなかった男性は、木の根元で震えっぱなしで一夜を明かしたという。7日も強い風でヘリコプターは捜索に入れず、地上の救助隊員が昼すぎに男性を見つけた場所は、下山コースから大きく北東に外れていた。

 6日は平地でも雨風が強まり、長野市など各地で花見イベントが中止になった。男性ら3人は天候悪化は予想していたが、変化が早い山岳気象の基本的な知識を持っていなかった。「経験者と行くから大丈夫という過信があった。これほど天候の変化が早いとは」。男性はそう振り返った。

【予想天気図の確認は必須 気象予報士・猪熊隆之さん(茅野市)】

 2013年4月6日は山や海が大荒れになる「爆弾低気圧」が日本を通過した。気象庁も無理な外出は控えるよう呼び掛けており、長野市の男性は、森林限界を超えた場所で露営していたら風雨で命を落としていただろう。予想天気図を確認せずに入山するのは、道路標識を見ないで車を運転するのと同じだ。中心気圧が24時間で10ヘクトパスカル以上下がる低気圧を予報で確認したら、春山でも入山を控えるべきだ。天候悪化を予想したら、引き返す地点を事前に決める必要もある。雪山登山の技術や知識がないなら、バックカントリースキー、スノーボードを始める前に講習会やガイドツアーに参加してほしい。

写真説明:木々の間を抜け雪の斜面を滑るバックカントリースキー。人気の高まりで雪山に入る人は増えている=2月中旬、松本市安曇の十石山



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