信州山小屋ネット~朝日に染まる白銀の山々(大町市の山岳博物館から)

西駒山荘 荷下げ
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西駒山荘
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霧ケ峰
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涸沢
涸沢

あんぜん登山の最前線~雪山からの生還~(1)
2014/03/11 14:04
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 今冬の県内は寒さが続き、平地も大雪に見舞われた。春の日差しはまだうかがえないが、3月末にかけて寒さが和らぐと、雪も締まって山岳地帯に登山者の姿が増え始める。ただ、これから大型連休ごろまでは、標高2千メートル級の山も天候次第で厳しい冬山に姿を変える。雪崩遭難が起きる季節でもある。雪に覆われた山で遭難し、かろうじて生還した人たちの経験から、リスク回避の教訓を探る。

<消えた登山道 現在地知る手だてなく>

 「まずいな。足跡が見つからない」。好天に恵まれた2013年5月4日、上田市のアルバイト女性(30)は、1人で登った須坂市と群馬県境の浦倉山(2090メートル)を下山中にルートを見失った。足元の厚い雪は、締まって足跡が付きにくかった。

 足跡のようなものはあるが、雪の吹きだまりか、動物のものか―。「こっちに行けば大丈夫」「いや、あっちだ」。行ったり来たりを繰り返し、胸の鼓動だけが高まっていった。

 午後3時すぎ、西に見えていた須坂の街並みを目指して沢沿いを進んだ。「沢に下るのは危険と知っていたが、雪から逃れたかった」。目の前の小さな滝を迂回(うかい)しようとした時、転倒、滑落し、腰を打った。激しい痛みで起き上がれなくなった。携帯電話も通じず、「夜を越すしかない」と覚悟を決めた。

     ◇

 女性は「息抜きと達成感が味わえる」と、10年ほど前に年2、3回の里山登山を始めた。登山道が整備された浦倉山も、ガイドブックで道迷いの心配のない中級コースと紹介される里山だ。数年前の雪のない時期に登ったが霧に巻かれ、「晴れた日に、もう一度登りたい」とあらためて訪れた。

 この日は、前回と同様に日帰りで須坂市の「米子大瀑布(だいばくふ)」近くの登山口から登り始め、同じルートを下りる計画だった。新緑と二つの滝の眺めを楽しむ一方、残雪の多さに「転倒などに気を付けなければ」とは思ったという。

 女性は地図もコンパスも使ったことがなく、現在地を知る手だてはなかった。頂上に戻って登山道を推測する手はあったが、頂上も樹林帯に囲まれており、登り返すのにどれだけ時間がかかるか分からない。女性は体力に不安を感じ、夕暮れも近づいていたため、下りやすい沢沿いに入ってしまったという。

    ◇

 女性が持っていた食料は、手のひらほどの大きさのチョコレートとビスケット2、3個。防寒着と雨具を着込み、夜空を見上げて痛みと寒さに耐えた。

 5日午前5時ごろに少し体が動くようになり、周囲の木々に赤いテープが巻かれているのに気付いた。痛みをこらえ、テープを頼りに何とか2、3時間下ったところで釣り人を見つけた。「遭難しました」。大声で叫んでいた。

 下山後、女性は登山道から北西に1キロほど離れた沢を下っていたと知らされた。「まさか日帰りの里山で迷うなんて…」。何事もなく終わるはずだった日帰り登山で、女性は背骨を折る大けがを負った。

【地図とコンパスで確認を 「読図」に詳しい静岡大教育学部教授・村越真さん(静岡市)】

 道迷いによる遭難は、今回の例のように予定ルートを外れることで発生する。樹林が多くて見通しが利かず、地形も複雑な里山は、高山に比べて迷いやすい。対策として、地図とコンパスの使い方を学んで携帯し、現在地を常に把握する技術が必要だ。今回のような「ルート外し」を防ぐには、予定したルートが通る尾根、谷、巻き道(迂回(うかい)路)といった地形や方向を地図で読み取り、それを実際に確認する必要がある。下山中に道を間違えると、予定とは大きく異なる方向に進んでしまうことが多い。コンパスで頻繁に方向を確認するのは、遭難防止のために有効だ。

写真説明:上田市の女性が入り込んだ沢の入り口付近。左奥に須坂市や長野市を望むことができる=8日



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