信州山小屋ネット~朝日に染まる白銀の山々(大町市の山岳博物館から)

西駒山荘 荷下げ
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西駒山荘
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霧ケ峰
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涸沢
涸沢

あんぜん登山の最前線~冬山への備え~(中)
2013/12/20 15:59
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<GPS端末の活用 紙地図・コンパス併用を>

 「ここで登山道を外れよう」。5日、松本市街地の北東にある戸谷峰山頂(1629メートル)を目指す県山岳協会理事長の大西浩さん(53)=松本市=は、道のない沢沿いへ分け入った。衛星利用測位システム(GPS)を搭載した端末を手に持っていた。

 画面の地図には、現在地と歩いてきたルートが表示されている。「しばらく進めば沢が二股になっているはず。そこまでナビゲーション(案内)機能を使おう」。二股の地点を目的地として登録し、表示された案内ルートを外れないよう進んだ。

 約1時間後、迷わずに戸谷峰山頂にたどり着いた。大西さんは雪を頂く北アルプスを遠くに眺め、「GPS端末は登山に革新的な変化をもたらした。高いレベルの案内をしてくれる」と語った。

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 衛星電波で現在地を割り出すGPSは、カーナビで普及する一方、登山者にも急速に広がった。手のひらサイズに小型化され、登山向けの平均的な専用端末は5万円程度。近年は、地図ソフトを入れたGPS機能付きのスマートフォンを山で使う人もいる。

 周囲の地形が見通せない悪天候の日や、登山道が雪に覆われる雪山での利用価値は高い。猛烈な吹雪で全く視界が利かなくなる「ホワイトアウト」の状態でも、かなり正確に現在地や目的地の方向を知ることができる。

 大西さんは昨年から、国立登山研修所(富山県)でGPS端末の活用方法を検討する指導者向け研修会の講師を務めている。大幅に向上した測定精度や、歩いたルート、標高差、歩行距離、スピード変化といった情報の記録機能を生かす道を探っている。

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 ただ、「落とし穴もある」と大西さんは指摘する。

 「おかしいな…」。9月2日、北ア焼岳(2455メートル)に向かった大西さんはGPS端末の不調に気付いた。登山口で電源を入れても正確な位置を表示しない。その後も登山道から外れた場所を「現在地」として示し続け、表示が途切れる区間もあった。

 好天で、よく知った登山道。不都合はなかったが、吹雪なら生死に関わるケースだったと大西さんは振り返る。

 GPSの仕組みや地図に詳しい静岡大教育学部(静岡市)の村越真教授(53)によると、不調はGPS衛星の並び方が原因とみられる。現在地は複数の衛星から電波が届く速度で割り出すが、衛星が一直線に並ぶと誤差が生じやすい。当日は焼岳上空の複数の衛星がほぼ直線に並び、そこから外れた衛星の電波も山の尾根に遮られたとみる。

 いくつもある人工衛星が直線状に並ぶケースはまれだが、村越教授は「起こり得ることだ」と話す。大西さんは村越教授とともに講師を務める登山研修所の研修会で、その事例を発表した。

 村越教授は「GPS端末の小さな画面では、山の全体像をつかめない。山全体が分かる紙の地図を読み解き、周囲の地形を見て次の行動を判断する力は、GPS端末だけでは身に付かない」と言う。

 「GPS端末は伝家の宝刀。地図とコンパスによる読図の技術を補う道具として活用すべきだ」。戸谷峰山頂で紙の地図を畳みながら、大西さんはそう話した。

写真説明:右手に持ったGPS端末が示す現在地を、地図とコンパスで確認する大西さん=5日、松本市の戸谷峰山頂



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