信州山小屋ネット~朝日に染まる白銀の山々(大町市の山岳博物館から)

西駒山荘 荷下げ
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西駒山荘
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霧ケ峰
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涸沢
涸沢

あんぜん登山の最前線~多様化時代と「学びの場」~(1)
2013/11/05 11:35
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 県内で今年起きた山岳遭難の件数は、既に昨年1年間を上回って4年連続で過去最多となった。多様な年齢や技術、経験の登山者が、さまざまな目的を持って集まる県内山岳。その魅力を存分に楽しむには、危険を理解し、安全登山の知識を深める必要がある。そうした学びの場を提供する山岳ガイドや登山講座、山岳会組織の現状をみる。

<81歳・岩登り挑戦 ガイド同伴「人生に目標」>

 中央アルプス宝剣岳(2931メートル)の山頂から、眼下に錦絵を思わせる紅葉が広がった10月2日。東筑摩郡山形村の宮沢弥部(やぶ)さん(81)は、山頂に至る中央稜の岩登りに挑戦した。初心者向きだが80代で登る人はほとんどいない。

 「うまい具合に登れるかや」。不安そうな宮沢さんを、日本山岳ガイド協会認定のガイド中島佳範さん(41)=松本市四賀地区=が励ました。「苦労した分だけ充実感は大きいですよ」

 登り始めると、中島さんは宮沢さんから目を離さない。結び合ったロープを張って引き上げたり、緩めたりして安全を確保する。1時間半で登り切った宮沢さんは、「いつも岩登りはこれで最後と思うが、じきにまた中島さんと行きたくなる」と、顔をしわくちゃにして笑った。

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 宮沢さんは65歳で大腸がん、3年後に腸閉塞(へいそく)の手術を受けた。命が危ぶまれたこともあり、体重は40キロ台に減少。健康を取り戻そうとウオーキングを始め、知人の勧めで登山に引き込まれたのは2003年、71歳の時だった。

 北アルプスなどに30回近く登った年もある。ただ、登山の知識や技術は独学。単独で北ア・針ノ木岳を登山中に転倒し、20メートルほど滑落する経験もした。山仲間に中島さんを紹介されたことが、山登りのスタイルを見直すきっかけになった。

 06年9月には北ア・前穂高岳北尾根で岩登りを始め、今は雪山やアイスクライミングも楽しむ。海外でも07年に欧州アルプス最高峰のモンブラン(4810メートル)、11年にはネパール・ヒマラヤの6千メートル峰に中島さんと登頂した。

 「人生は目標がなければ張り合いもないし、元気も出ない」と宮沢さん。見守る中島さんは「登りたくても1人では登れないルートを、登山者の実力を見ながら安全に頂に導くこと」と、ガイドの役割を語った。

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 昨年、県内の山岳で遭難した279人(死者42人)のうち、46・5%に当たる130人(同29人)が60歳以上。体力の衰えと、それに見合わない登山計画が高年齢者の遭難に結び付いている―との指摘は少なくない。

 一方で、5月に世界最高峰エベレスト(8848メートル)に史上最高齢の80歳で登頂した三浦雄一郎さんをはじめ、周到な準備の下に困難な高みを目指す高齢者もいる。宮沢さんがたどり着いた安全への備えは山岳ガイドの活用だった。

 県内で活動する山岳ガイドらによると、一般的なガイド料はガイド1人につき1日3万円。岩登りなどは、別に技術料が必要になる。

 中島さんと登るようになってからけがをしていないという宮沢さんは、「いいガイドに巡り会えたから、幸せな人生を送ることができる」と言う。ガイド登山で自身の技術も向上させ、安全な登山を続けることが、生活の質も向上させたと考えている。

写真説明:ロープが必要な切り立った岩場を登る宮沢さん(右)とガイドの中島さん=10月2日、中央アルプス宝剣岳中央稜



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