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あんぜん登山の最前線~密着・遭難救助~(4)
2013/08/27 10:09
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<パトロールや相談 遭難を防ぐ地道な活動>

 北アルプス穂高連峰に青空が広がった3日、北ア南部地区の夏山常駐パトロール隊の吉田英樹隊長(58)は、隊員になって3年目の相川大地(たいち)さん(32)を連れ、北穂高岳から奥穂高岳の稜線(りょうせん)をパトロールした。

 この日、北穂高小屋を出発したのは午前7時。登山者の多くは既に小屋をたった後だった。「パトロールは登山者の出発を見守り、追い掛けるような行程になります」と吉田さん。相川さんは出発直前まで、屋根に布団を干す作業を手伝った。救助などで助け合う山小屋と普段から協力し、信頼関係を築くのも大切な仕事だ。

 稜線は長野と岐阜の県境に当たる。吉田さんは歩きながら、岩登りで人気がある岐阜県側の岩壁「滝谷(たきだに)」の登攀(とうはん)ルートを説明した。「(岐阜県側の)ドーム中央稜のルートには、ここから入って行けばいい」「ここは『オダマキのコル』と呼ばれる」と地図に載っていない地名も丁寧に伝えた。岐阜県側に長野県の常駐隊員が遭難救助に行くことはほとんどないが、細かい地理が頭に入っていれば、いざという時迅速に対応できる。

 「先に下りてください」。奥穂高岳近くのはしご場では、下りと登りの登山者に声を掛け、安全に擦れ違いができるよう誘導した。パトロール中、滑落が起きた現場などで「気を付けて歩いてください」と登山者への呼び掛けもする。

 「派手さはないが、登山者と接し、登山道の状況を把握する地道な活動が、遭難防止につながる」。吉田さんはパトロールの意義を強調した。

   ◇   ◇    

 常駐隊と県警山岳遭難救助隊の拠点となる標高約2300メートルの北アルプス・涸沢の県涸沢山岳総合相談所で、早朝から始まる相談業務も、遭難防止の上で大切だ。経験豊かな隊員たちが、装備、登山道の状況、所要時間など登山者の質問に答え、アドバイスする。

 「ヘルメットはかぶった方がいい。皆さんのような人生の先輩が着用してくれれば、周りにも広がります」

 県警山岳遭難救助隊松本班班長の岸本俊朗さん(35)は1日、高齢の登山グループを説得するように助言した。グループは翌日、涸沢から岩場が続く登山道「ザイテングラード」を経由して奥穂高岳へ登る計画だという。一般的なルートだが、転倒や滑落事故は多い。助言を受けた高齢者の一人は翌日、山小屋でヘルメットを借りた。

 県警機動隊所属の山岳救助隊員として困難な救助現場で経験を積んできた岸本さんが、松本署所属の県警山岳遭難救助隊員になったのは、今年4月。救助に専念するだけでなく、遭難者の家族や遺族への対応もするようになった。

 「遺体の損傷が激しいですが、対面されますか」。亡くなった遭難者の妻や子どもに掛ける言葉を探し向き合うことは、想像していた以上につらかった。駆け付けた家族の宿泊場所の手配や、葬儀の連絡を手伝うこともある。「家族はいつまでも区切りを付けられないんだよ」

 岸本さんは時に、「午後は確実に天候が崩れる。登るのはやめた方がいい」と厳しい口調で、登山者に計画中止を求める。機動隊所属だったころは「一線の救助現場で活躍したい」と思っていたが、今は「遭難の未然防止が一番」と心の底から思っている。

写真説明:パトロール中、若手常駐隊員の相川さんに事故を起こしやすい場所などを教える吉田さん(右)=3日、北アルプス北穂高岳―涸沢岳間の稜線上



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