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「山の手帖2018」
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松本 山岳フォーラム
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浅間山噴火「系統樹」
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あんぜん登山の最前線~身近な遭難から学ぶ~(5)
2013/08/10 10:19
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<高齢者登山時代へ 体の衰え「疲労」遭難招く>

 北アルプス・爺ケ岳(2669メートル)へ続く柏原新道は、登り始めの急な「モミジ坂」を過ぎれば緩やかになる。整備が行き届き、約4時間で稜線(りょうせん)上の山小屋「種池山荘」に着ける手軽さもあり、夏は県内外の登山者でにぎわう。

 山口県山陽小野田市の男性(68)は7月21日、趣味の山岳会の会長として、会員15人を率いて種池山荘を目指した。駐車場の扇沢(大町市)で入念に準備運動をし、午前9時10分に出発した。

 高校では山岳部、卒業後は社会人山岳会に所属。近年は2カ月に1回は中国・九州地方の山に通い、年に数回北アルプスなどにも登っている。

 体力の衰えは自覚していた。昨夏、南アルプス・赤石岳(3120メートル)の登山で初めて脚をつった。30分ほどの休憩で回復したが、今回は不安もあった。

 歩き始めて間もないモミジ坂の途中、会員の女性(69)の足取りが重くなった。男性は女性の荷物を全て持った。急登の終わりを知らせるケルン(石を積んだ目印)に着いたのは正午。予定より1時間ほど遅れていた。

 休憩後、緩やかな登山道を歩き始めると、右の股関節がこわばるのを感じた。赤石岳で脚をつった時と同じだ。すぐに休憩し、立ち上がろうとすると、息ができないほどの激痛が右脚に広がった。持参の水や塩分を補給し、薬も飲んだが治らなかった。

 仲間たちは先に小屋に到着。男性は午後3時半になっても動けない。状況を知った仲間が山小屋を通じて救助要請した。男性は県警、民間の救助隊員に背負われて下山。途中で回復し、歩いて下った。

 2012年の県内の全遭難者279人中、60代以上は130人(約47%)を占めた。「中高年登山」ブームは、団塊世代が定年を迎えた今、「高齢者登山」の時代へと入り始めた。加齢に伴うリスクも高まりつつある。「疲労」とされた男性の遭難理由は、昨年の夏山(7~8月)の遭難117件のうち9件だったが、将来は増えることも予想される。

 男性はこの取材のために、出発から遭難・救助までの経過や、「水2リットル」「スポーツドリンク」「塩」など所持品の記録をまとめ、記者にメールで送ってくれた。「山を愛する仲間の山岳遭難防止の一助になれば」と理由が添えてあった。

 今後は「観光に重点を置き、年相応の山を楽しんでいきたい」と男性。長野県の山々を再び訪ねたいと考えている。

【筋力アップのための運動を 信州大大学院医学系研究科教授・能勢博さん(安曇野市)】

 20歳の筋力を100%とすると、10歳ごとに10%ずつ落ちると考えてください。まずは、年齢とともに、体力や筋力が落ちることを自覚すべきです。高齢で、体力がない人ほど、運動で生み出される熱量が減るのも特徴です。風雨の中をゆっくり歩いていると、低体温症になりやすい点も認識してください。

 でも、諦めないでください。早歩きやジョギングなど「ややきつい運動」(10分で若干汗ばみ、20分で少し脚が痛くなるくらい)を1日15〜30分、週4日のペースで5カ月間続ければ、筋力は10%向上します。60代の登山者であれば、50代の筋力に近づきます。

 筋肉が硬くなりやすいのでストレッチは欠かさないでください。体力と柔軟さが増せば、山を歩く負担は減り、楽しさが増します。

写真説明:緩やかな登りが続く柏原新道=8日

 (おわり)


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