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西駒山荘
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涸沢
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あんぜん登山の最前線~身近な遭難から学ぶ~(3)
2013/08/08 10:35
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<思わぬ発病 体調万全…突然の脱力>

 「しばらく休めば治るだろう」。埼玉県の会社員男性(62)は7月14日、北アルプス・白馬岳(2932メートル)の白馬大雪渓を下っている途中、突然、太ももや膝に力が入らなくなった。軽く考えていたが、歩行困難になり、救助隊員に抱えられて下山する結果になった。

 還暦を迎えた年に高脂血症の治療薬の服用を始めた。「運動しなくちゃいけない」と昨年9月、高校時代に打ち込んだ山登りを再開。飲酒や喫煙もやめた。

 埼玉県の低山に2カ月に1回ほど通い、自宅近くの公園で1~2時間のジョギングを週1回のペースで続けた。ことし6月には中央アルプス・駒ケ岳(2956メートル)に登って自信を深めた。次の目標が白馬岳だった。

 7月13日、雨の中を北安曇郡白馬村猿倉の登山口から頂上直下の白馬山荘まで歩いた。「小屋で衣類を乾かし、よく寝て疲れは取れた。筋肉痛はなかった」。翌日も小雨だったが、早朝に頂上を往復し同山荘で休んだ後、午前7時に下山を始めた。

 体調は万全。順調な足取りだった。しかし、大雪渓を下り始めて約30分、突然脚に力が入らなくなった。「なんだ、これは」。水を飲んで、どら焼きを食べて30分ほど休んで歩いたが、「ガクッと落ちるように転んでしまう」。

 午前11時ごろ、見かねた他の登山者がストック(つえ)を貸してくれ、麓の小屋へも連絡してくれた。症状は悪化し、ストックの助けを借りて立つのがやっと。やがて雪面に座り込んでしまった。午後2時すぎ、民間と県警の救助隊員が到着。両脇を支えられたり、おぶってもらったりしながら猿倉にたどり着いた。

 筋肉が壊れる「横紋筋融解症(おうもんきんゆうかいしょう)」。下山後に病院で診断された病名だ。日本登山医学会認定国際山岳医の千島康稔さん(52)=松本市=によると、発症頻度は低いが、高脂血症治療薬の副作用の一つだ。脱水や過度の運動も原因になるため、登山でこれらが重なり発症したのではないか―とみる。

 昨年7~8月に県内で発生した遭難117件のうち「発病」は「転倒・滑落」に次ぐ9件(7・7%)あった。3千メートル級が連なる県内山岳では、酸素が薄く気圧も低いため、思いがけない症状が現れやすい。「健康には山登りが良いと思っていたのに…」と男性。今後は「かかりつけ医と相談しながら、無理のない範囲で続けたい」と考えている。

【平地での症状 増幅される 日本登山医学会認定国際山岳医・千島康稔さん(松本市)】

 運動負荷が強く、持続時間が長い上に低酸素も加わる登山では、平地ではわずかな症状の病気も増幅されて強い症状になります。

 高血圧だけれど治療を受けていない人は、脳血管障害など重い合併症を起こす可能性があります。心臓病の人は事前に登山医学の知識がある医師などに相談しましょう。糖尿病で内服薬やインスリンで治療している人は、低血糖発作で意識消失を起こす危険もあります。単独登山を避け、こまめにカロリーを補給し、緊急時の対処方法を学ぶ必要があります。

 盲点になるのが風邪のひきはじめと治った直後です。肺の機能が十分に回復していないと重症の高山病を起こすことがあります。普段から健康診断を受け、しっかり健康管理をしてください。

写真説明:下山の途中で歩けなくなった白馬大雪渓=7月20日



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