信州山小屋ネット~朝日に染まる白銀の山々(大町市の山岳博物館から)

「山の手帖2018」
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松本 山岳フォーラム
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浅間山噴火「系統樹」
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松本 山岳フォーラム
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あんぜん登山の最前線~身近な遭難から学ぶ~(2)
2013/08/07 09:58
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<単独行で道迷い 先行登山者の足跡頼り>

 ことしの北アルプスは残雪が多い。愛知県の会社員杉浦栄孝(ひでたか)さん(43)は6月8日、上高地から単独で焼岳(2455メートル)を目指した。初めての北ア登山だった。「比較的易しく、有名な山だから道標もちゃんとしているだろう」と思っていた。

 晴天に恵まれた。上高地からの道は、木にテープが巻いてあり、残雪にも足跡があった。難なく頂上に着いた。昼食後は、中ノ湯に向かうルートで下山を始めた。

 バイクでの林道走行を趣味にするうち、「奥の山に入ってみたい」と、約3年前から登山を始めた。山仲間はほしかったが、「社会人の山岳会は敷居が高い」と感じ、月2回くらい愛知県内の里山や、南信地方の低山を1人で登ってきた。

 情報収集の主な手段はインターネットで見られる他人の山行記録だ。今回も「雪はほとんどなかった」と書いていた人がいたので、アイゼンやピッケルは持たなかった。

 「あとは帰るだけ。登りと同じように標識があるだろう」。下り斜面は雪に覆われていた。所々に見える岩に記された印と、先行した登山者の足跡を頼りに下った。

 しばらく行くと印や足跡がないことに気付いた。登山道から外れないよう尾根寄りを歩いているつもりが、少しずつ谷の急斜面へと向かっていった。しかし、「いずれちゃんとした道に出るだろう」と思い、ザックから地図とコンパスを出して位置を確認することはしなかった。

 突然、急斜面が現れた。「いかん」と思ったが、踏み出した足を止められなかった。45度ほどもある雪の急斜面を滑り落ち、止まった。周囲は幾つもの割れ目(クレバス)の入った雪面で、眼下には崩落した谷が広がる。登り返すために必要なピッケルとアイゼンはない。

 進退窮まった。パニックに陥りながら携帯電話で救助を要請し、県警ヘリに収容された。登山道より北側の下堀沢に入り込んでいた。さらに下って滑落していれば、命がなかったかもしれない。

 松本署で「なぜ地図を見なかったの?」「登山は自力で下山するのが基本」と注意された。

 「自分がどのくらいのレベルなのか、どうやって学んだらいいか分からない」まま山行のレベルを上げてきた。「大変ご迷惑をかけた。もっと勉強が必要だと身に染みた」。今は登山技術を学ぶ講習会の情報を、インターネットで集め始めている。

【分岐点 地図で必ず位置確認を 北ア南部地区遭対協夏山常駐隊長・吉田英樹さん(長野市)】

 穂高連峰登山の拠点となる北ア涸沢に常駐していると、「奥穂高岳を目指しているんですが、どこを登ればいいのですか」と平然と聞いてくる登山者がいます。登山前、地図でルートを確認し、地理を頭に入れてください。

 登山中は「先行者に付いていけば何とかなる」という他人任せはいけません。分岐点に来たら地図を見て、必ず現在位置を確認するようにしてください。道迷いに陥るのは下山中の単独行が多いですが、最近は夫婦やグループが下山中にばらばらに行動して迷うケースもあります。

 登山道を外れると転倒や滑落にもつながります。昨年も奥穂高岳から前穂高岳への縦走路で道に迷い、滑落した例があります。おかしいと思ったらそのまま下らず、面倒でも登り返すという原則も徹底しましょう。


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