信州山小屋ネット~朝日に染まる白銀の山々(大町市の山岳博物館から)

西駒山荘 荷下げ
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西駒山荘
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霧ケ峰
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涸沢
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あんぜん登山の最前線~身近な遭難から学ぶ~(1)
2013/08/06 15:15
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 本格的な夏山シーズンが到来し、県内の山々は大勢の登山者でにぎわっている。最盛期の夏山は例年、遭難事故が最も多い時期でもある。7月末に中央アルプスで起きた韓国人グループの遭難のような大きな遭難事故の一方、ベテラン、初心者を問わず、少しの気の緩みがもたらす小さな事故が、思いがけず遭難につながることも多い。救助を求めた登山者の証言から事故の瞬間に迫り、安全な登山への教訓を学ぶ。

<緩斜面の転倒 下山中に油断「まさか」>

 「まさかこんな場所で骨折なんてしないだろう」。そう思っていた。

 たおやかな山容が特徴の上田市・須坂市境の根子岳(ねこだけ、2207メートル)は、初心者にも人気がある。7月14日、群馬県吉岡町の男性(64)は、上田市菅平高原側で頂上直下の平たんな道を下山中、浮き石に足を取られて転倒、左足首に全治3カ月の骨折をした。

 「危険の少ない山。花の撮影をゆっくり楽しもう」。男性が所属するハイキングクラブのリーダー(65)=前橋市=が提案した山行だった。女性3人を含む5人パーティーで、立ち止まっては撮影して登り、昼前に登頂した。

 昼食を取って1時間半ほど休憩した。男性の荷物は5~6キロと軽く、疲れはなかった。月4回ほどのペースで山行を続け、冬場もスキーで足腰を鍛えている。根子岳にも数回登った経験があった。「温泉に入り、そばを食べよう」と思いながら下山を始めた。

 眼下に広がる菅平高原の眺望を見ながら、広く緩やかな道を10分ほど下った場所で、左足を乗せた石がぐらりと動き、そのまま転んだ。

 「捻挫かもしれない」と湿布を貼り歩き始めたが、5分ほどで激しい痛みを感じ、立つことができなくなった。

 「安易な救助要請にならないか?」。リーダーは痛みに苦しむ男性の脇で、救助を求めるべきかどうか悩んだ。同ハイキングクラブは日頃から救急講習などを受けている。だが、女性3人での搬送は難しいと感じた。知り合いの医療関係者が「生半可な処置で自力下山すると神経を痛める」と言っていた。リーダーは「救助を頼もう」と決断。携帯電話で長野県警に連絡し、約1時間後にヘリコプターで救助された。

 県警山岳遭難救助隊によると、昨年の夏山シーズン(7~8月)に発生した遭難117件のうち、転倒や滑落は76・9%(90件)を占める。かつては険しい岩場での滑落が多かったが、最近は「何げない」登山道で高齢の人が転倒し救助要請する例が目立つ。

 若いころより筋力が衰えている中高年登山者の転倒や滑落による足や脚の負傷は、初めは痛みが軽いと思っても歩行不能に陥ることがある。「携帯電話もつながらない山で、単独だったらどうなっていたか」と男性。リーダーは「われわれの年代になったら気を付けなくちゃいけないな」と自らを戒めた。

【足裏全体で地面踏みしめて 山岳ガイド・安倍仁さん(白馬村)】

 転倒・滑落の大半は何げない登山道の下りで発生します。昼食を食べた後の集中力が途切れる時間帯に起こりやすく、ガイド登山では意識的に注意を促しています。膝が疲れると重心が後ろに移り、かかとから下ろしてバランスを崩す。小またでゆっくり丁寧に足裏全体で地面をつかむように下ってください。

 高齢の登山者は、手を突いただけで骨折することがあり、65歳ごろから急激にバランス感覚が鈍る人も多いように思います。自身の体力や筋力を自覚しないで実力以上の山行で遭難する例も増えています。階段の上り下りを繰り返すなどして筋力を十分につけてください。

 足首まで覆う登山靴を履くのは当然で、膝のサポーターや、転倒・滑落によって頭を負傷しないためにヘルメットを着用するのも有効です。



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