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松本 穂苅さんしのぶ
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「山の手帖2018」
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松本 山岳フォーラム
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浅間山噴火「系統樹」
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松本 山岳フォーラム
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あんぜん登山の最前線~槍・穂高連峰から~(下)
2013/07/05 10:15
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<広がるガイド活用 技術学びレベルアップへ>

 切り立った岩尾根が続く北アルプス・西穂高岳(2909メートル)への登山道。「歩幅は狭くした方がバランスを取りやすいですよ」。日本山岳ガイド協会(東京)認定のガイド中島佳範さん(40)=松本市四賀地区=が6月25日、岩場に入る直前に歩き方のこつを教えると、登山者はそれぞれ歩き方を確かめるように登り始めた。

 この日、中島さんと、同協会認定の佐々木常念さん(41)=長野市戸隠、佐藤玲奈さん(38)=東京都文京区=をガイドに、県内外の登山者6人が岐阜県高山市の新穂高ロープウェイから西穂高岳へ日帰り登山をした。6人は山岳会などに所属しておらず、ガイド側が企画した登山に個別に参加を申し込んだ。

 中島さんは登山口で「今日は雷雨の可能性があり、途中で引き返すかもしれません」と、天候急変に備えた行動を確認。雪面では安定した足の運び方を、岩場では落石に気付いたら大声で知らせるなど、山岳会では必ず習う基本的な知識や技術を、登山道で丁寧に伝えた。

 危険箇所ではガイドと登山者が体をロープで結び、頂上手前ではガイドが登山者に道を譲り、全員が登頂した。中島さんは登頂の喜びを分かち合いながらも「休んだら早く下り始めましょう。危険を減らします」。樹林帯でも「集中力を切らさないで」と、登山口に戻るまで気を抜かないよう注意を促した。

   ◇   ◇

 登山者がガイドを求める理由はさまざまだ。参加した渡辺優子さん(38)=長野市=は2年前、憧れの西穂高岳登山に挑んだが、「岩場が怖くて途中であきらめた」。ガイドとの再挑戦に「安心感が大きい」と登頂に満足していた。北安曇郡白馬村の犬飼和香子さん(36)は「雑誌では分からない技術が学べて、ガイドのひと言が自分を成長させてくれる」と話した。

 中島さんは1人から多くても数人までを、岩登りも含めてガイドする技術がある。ガイド料金は1日3万円で参加者が人数で割って負担する。「料金が高い」とガイド登山を敬遠する人もいるが、栃木県小山市の大谷宏恵さん(46)は「ガイドから知識を学ぶことが安全への近道。自分のレベルを一つ上げたい時に活用すればいい」と考える。

 中島さんは松本市出身。高校、大学の山岳部を経て、社会人山岳会で活動した。1998年から2002年まで東京の山岳ガイド事務所に所属、年間100日超は山に入った。02年から松本市内の登山用品店で働き、04年に独立しガイド事務所を設立した。

 山岳ガイドの役割は「危険を取り除き、技術を補うこと」と考え、レベルに応じて難しいルートも案内する。人数が多いツアー登山と異なり、個人と向き合う規模のガイド登山は、技術を伝えて自立した登山者を育てられるとの思いも強い。

   ◇   ◇

 09年夏、ガイド1人を含む8人が低体温症で凍死した北海道・トムラウシ山遭難事故では、ガイドの判断力も問われるなど、課題を投げ掛けた。質のばらつきなど、国内の山岳ガイド制度は発展途上の面が少なくない。

 ただ、「最近は中高年の依頼に加え、技術を学びたいという30〜40代の女性が増えてきた」(中島さん)といい、ガイド登山の需要は広がりつつある。日本山岳ガイド協会常務理事の武川俊二さん(58)は「安全確保と同時に、山の文化や歴史、自然保護のマナーなど、新しい山の魅力に気付いてもらうのもガイドの役割」と話す。ガイド制度の確立とともに、一人一人の登山者の安全意識を高めたいという。

写真説明:登山者とロープを結び、岩場を歩く中島さん(左)、佐々木常念さん(右)=6月25日、西穂高岳


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