信州山小屋ネット~朝日に染まる白銀の山々(大町市の山岳博物館から)

「山の手帖2018」
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松本 山岳フォーラム
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浅間山噴火「系統樹」
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シカ害、南ア浸食 採食・踏み荒らしで土壌不安定に
2009/10/31 10:21
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 ニホンジカによる植物の食害や踏み荒らしが深刻化している南アルプスの高山帯で、被害を受けた場所では、防護ネットを張った場所に比べ約6倍の土壌が雨で浸食されていることが、信大農学部(上伊那郡南箕輪村)治山学研究室の調査で分かった。研究室の北原曜教授は「被害が激しくなれば、保水力低下による洪水など、ふもとへの影響も出かねない」と指摘。被害が拡大している八ケ岳や中央アルプス、浅間山なども含め早急な対応が必要としている。

 大学院生の吉村綾さん(23)を中心に2007年12月から調査。いずれも食害や踏み荒らしが確認された仙丈ケ岳の馬ノ背の標高2640メートル地点、大平の1960メートル地点、戸台の1020メートル地点の3カ所を対象にした。

 それぞれ斜面にベニヤ板で縦3・5メートル、横1・2メートルの枠を二つずつ作り、谷側に箱を設置。一方の枠は防護ネットでシカの侵入を防ぎ、もう一方はそのままにした。箱に入る土壌を1~2週間ごとに回収、それぞれ量を比べるとともに各地点の雨量を調べた。

 その結果、昨年9月からの1年間で、積雪や凍結のない7~10月に回収した土壌量を1ヘクタール分に換算すると、馬ノ背はネット内が1・59トンだったのに、ネット無しは9・99トンと約6倍だった=グラフ。

 雨量が増すほど浸食量の差も広がった。実測値から求めた計算式で100ミリと300ミリの場合を比べると、ネット内は0・15トンから0・25トンへと微増だったが、ネット無しでは0・89トンから1・81トンへと0・92トンも増えた。吉村さんは「シカの採食で植生が減り、降雨の影響が強く表れたのではないか」とみている。

 戸台の08年9月までと09年9月までの各10カ月間の浸食量を比べると、ネット内は10・4トンから2・1トンに減少。採食されずに残った落ち葉が保温の役割を果たし、冬季に霜が降りにくくなったことなどから、1年目より土壌が安定したとみられるという。ネット無しでは24・9トンから35・9トンに増えていた。

 大平では地面にコケ類が繁茂しており、ネット有り、無しともに浸食量は比較的少なかった。

 北原教授によると、斜面に生えた植物には雨粒の衝撃を和らげたり、地表を流れる水の勢いを弱めたりして土壌の浸食を防ぐ機能がある。1ヘクタール当たり10トンの流失量は、およそ厚さ1ミリ分の土壌に相当するといい、シカ被害を受けた馬ノ背の浸食は「裸地や崩壊地に近い状況」と説明する。

 高山植物の再生が難しくなるほか、水質の悪化や洪水にもつながりかねないと指摘。「高山の別世界の話ではなく、生活にも響いてくることを踏まえて対策を考える必要がある」としている。



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