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「生きた化石」ヤツガタケトウヒ 南アでも確認
2006/01/23 09:54

 絶滅の恐れがある植物で、国内では諏訪郡富士見町の八ケ岳・西岳だけに生えているとされてきた針葉樹ヤツガタケトウヒが、県内の南アルプスでも確認された。約2万年前の氷期には、広く東日本に分布していた「生きた化石」。新たな生息地確認で、研究者は保存に向けた手掛かりの解明につながるのではと期待している。

 中部森林管理局(長野市)が2005年度まで3年間、独立行政法人森林総合研究所(茨城県つくば市)に委託した調査と、同研究所の勝木俊雄主任研究員(38)らが取り組んできた10年余りの独自調査で分かった。

 勝木さんらによると、ヤツガタケトウヒに似た木が生えているとの情報がある地域を徒歩で回りながらサンプルを採取。葉の細胞から遺伝子を抽出、分析したところ、上伊那郡長谷村や下伊那郡大鹿村の南アルプス北部などに分布しているのが確認された。

 新たに見つかった場所と八ケ岳の保存林を調べたところ、いずれも標高1、100―1、900メートルに生えており、ほとんどが伐採を禁止されている国有林内だった。また、幹の直径が20センチ以上で実のなる「母樹」は約1000本あることも初めて分かった。

 これとは別に、国が指定した八ケ岳の保存林で、母樹の生存率も調査。1年間で100本中1本のペースで枯れていた。10カ所で調べた発芽後の生存率は1年間で約4分の1と低く、試算では、10年間でほぼすべてが枯れてしまうという、育ちにくい木と分かった。

 現存する母樹は、多くが1959(昭和34)年の伊勢湾台風で、それまで生えていたヤツガタケトウヒが広範囲に倒れた後、山肌に光が当たるようになって育った若い林と考えられている。

 今回確認された生育地を調べた中部森林管理局の元島清人技術開発主任官(54)は「新たな生育地でも母樹が100本を超えるような集団はまれ。そうした場所でも、母樹が枯れた後、新たに林をつくる若い木が育っていない」と指摘。このままだと2万年を生き延びてきたヤツガタケトウヒは絶えてしまいかねない、と危惧(きぐ)する。

 勝木さんは「希少種が存在する地域全体が貴重な環境といえる。自然の力をいかし、木が次々と代替わりしていくことができないか研究を続けたい。他の希少種保存のモデルケースとなるのではないか」と話している。

ヤツガタケトウヒ マツ科の常緑針葉樹の一種で、高さ約30メートルになる。八ケ岳や南ア北部のように、高山で比較的雨量が少なく氷期に似た環境の場所に残ったと考えられている。環境省レッドデータブックで「絶滅危惧(きぐ)2類」に指定。国は、分布が確認されている西岳西斜面の約6ヘクタールを「西岳ヤツガタケトウヒ等林木遺伝資源保存林」として保護している。八ケ岳は2005年12月、環境保護団体の科学者らが米科学アカデミー紀要に発表した、世界各地の希少種の「最後の生息地」の1カ所に選ばれた。



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