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「そば茶」の隆盛─そば屋独特のお茶か

 この夏の猛暑に食欲も減退気味で、一般食堂などは苦戦していると聞きますが、信州のそば屋はそこそこに健闘しているようです。

 そんな善光寺近くのそば屋で。混んでいる店内に若い数人の男女が入ってきて、メニューを見ながら出されたお茶をすすります。だれかが「あ、そば茶だ」とつぶやき、他の人もうなずいていました。珍しかったのでしょうか。

 たしかに、この店で出すお茶はそば茶。かすかな風味がなかなかいいものです。そういえば、他の食堂、ラーメン屋とかうどん屋では見かけません。観光客が気にして賞味するのは、いかにもそば屋、と言えるのかもしれません。

 真夏になれば、店に入ってすぐ出される冷たい水はうれしい。一口飲んでからメニューに目を通して注文するのが楽しみというものです。

 そば屋では必ずといっていいほど「お茶」が出ます。これがいつの間にか、煎茶・緑茶でなく「そば茶」が多くなりました。夏場はこのそば茶が冷たいのになっている店もあり、ありがたく感じます。

 そば屋で出すお茶には、微妙な問題があるような気がして、以前から注意を払ってきました。

 もうずいぶん前のことになりますが、昭和50年(1975年)に出た『信州そばのはなし』(銀河書房)の中で、「そばとお茶」という項目で私は、

 「そば屋ではお茶を出さないところが多い。これは、そばにふくまれているルチンとお茶のタンニンが結合して苦味が出るからだといわれている。せん茶がとくにいけないようで、番茶ならかまわないともいわれる。」

と書きました。

 当時は、煎茶(緑茶)、番茶が主で、ハーブティーなどは見られませんでした。わずかに信濃町産の「えんめい茶」があったくらいです。夏ならば麦茶も少しはありましたが。ウーロン茶はまだ一般化していません。

 その後、そば屋で煎茶を出す店はどんどん少なくなり、かわりに「そば茶」が多くなっています。お茶でなく水を出す店もあります。

 そば茶の良さはといえば、カフェインが含まれていないので胃にやさしい、ということでしょうか。蕎麦を食べる時にも、蕎麦の風味を邪魔しないのがうれしいものです。

 そば茶の独特の香りがよく言われますが、意外に個性は少ないようです。香りだけで言えば、「焦げた穀物の香り」が主に見えます。

 もっとも、提供するそば屋の工夫で、濃さも含めていろいろな味があります。中には「いいなあ」という味にぶつかりますし、逆に風味の乏しい味気ないお茶になる店もあったりします。

 家庭用ではどうなのでしょうか。

 普通の「そば茶」の他に、「だったんそば茶」「苦そば茶」があり、最近は「赤花そば茶」なども売られています。粒状もあればパック入りもあります。入れ方は比較的簡単なようです。

 そして最近はペットボトルでも何種類か売っています。いや、今年はいくつか見かけましたが、だんだん店頭では減っているようです。これも流行があるのでしょうか。

 宣伝文句では主に「カフェインがない」「カロリーゼロ」などがうたわれています。そば特有の「ルチン」を多く含む、という効用もありますが、ソバの種類によって大きく違いがあるとされます。

 商品化されたそば茶は、多くは粉屋が製造しているようです。粉屋との取引もあって、そば屋で多く扱うのでしょう。

 あるいは、店のオリジナル商品も見かけます。作り方はむずかしくないのでしょう。何かの機会にそば屋で聞いた時には、珍しがって観光客がお土産用に買っていく、と言っていました。そうした売り上げをめざして、多くの店でそば茶を扱っているようです。

 そば屋のそば茶は、少なくとも信州ではすっかり定着しています。これが「文化」として育っていくのかどうか、関心をもって見守っていこうと思います。

… 2010年08月25日・記| trackback (0)

 

パワースポットと蕎麦の味─戸隠は秋ソバの芽が生えそろって

 いま流行の「パワースポット」を訪ねて、戸隠へ行ってみました。奥社参道のあたりが中心らしく、とてもにぎわっていました。

 戸隠へ来たからには、やはり蕎麦を食べなくては。ある店に飛び込んで食べたら、近ごろ珍しいくらい味の落ちる蕎麦でがっくりきました。あらら、これではお客さんに「戸隠そば」の最低の味を出してしまうなあ、というところです。パワースポットで頂いた「気」のありがたみが消えてしまいそうでした。

 たまたま家で干しそばをゆでて食べる機会がありましたが、くだんの店の味よりもよほどマシでした。珍しいことです。

 それで気になって、後日にいくつか戸隠の別の店で食べたのですが、それほどひどい味ではなくて、ホッとしました。味を落とした店は少数派でしょう。それでも、戸隠全体で一時は味のレベルが上がってきたと思ったのに、これではひどくバラバラになってきた印象で、困った事態です。蕎麦の味に関しても、人並みの観光地らしくなったとも言えますが。

 標高1000mをこえる高原地帯でも、今年の暑さは格別だといいます。まだ秋の気配は感じられませんでしたが、8月上旬は、戸隠も農村部では、ソバ(秋ソバ)の種蒔きの時期。早い人はもう蒔いてしまって、芽が出てきています。一部の畑で、出そろったソバの芽の列を眺めて、ホッとしました。実によく生えそろっているのです。適度に夕立などがあって、暑さとともにちょうどいい発芽の条件だったのでしょう。

 昨年の凶作の場合には、蒔いた種がうまく発芽しない、あるいは生えそろわずに生育がばらばらになった、などと言われました。それと比べると、実にきれいに生えそろっているのです。

 去年の凶作の影響で、今年は農家が本気でソバの栽培をやってくれるのか心配です。去年の損を取り戻すために、張り切って面積を広げて栽培する、という話も聞きました。

 今年は豊作になって欲しいなあ、と思います。たまたま、今年のお米の作況指数が早くも発表され、今年は豊作の予想が立てられています。お米が豊作の年はソバも豊作だと言います。当たってくれるといいですね。

… 2010年08月10日・記| trackback (0)

 

生麺の実力向上─「夏の蕎麦」異変?(4)

 6月から7月にかけて、長野県内の洋食のレストランに蕎麦のメニューが登場したことが地元マスコミの話題になりました。

 だいぶ前から、どこのファミリーレストランにも和食が多くなり、すっかり定着しています。それでも、うどん類はあっても蕎麦は珍しい方です。

 さっそく食べてみましたが、いろいろ工夫されていて感心しました。

 蕎麦自体は乾麺か生麺から作っているのでしょう、信州の一般のそば屋の味と比べてはいけないのかもしれません。薬味はイマイチの感でしたが、ツユなどはまあまあの味です。

 とはいえ、先日食べた長野駅前のそば屋を思い出してしまいました。取り組む姿勢、つまり懸命に味を研究しつつ謙虚に提供している方に好感が持てました。

 それで比較したくなって、あるJR駅構内の立ち食いそば屋を訪れてみました。食べやすかったのですが、相変わらずの味、とも言えます。たしか、生麺をその場でゆでて出すらしいのですが。蕎麦、ツユなどを比較すると、東京の立ち食い蕎麦はもちろん、ファミリーレストランの味にも負けているような気がしました。値段が違うので一概に比較してはいけないのでしょうが。

 そういえば、東信のある駅構内では、家庭で乾麺から作る蕎麦よりも落ちる味がありましたし、その駅前の立地のいい店では、手打ちとはとても思えない蕎麦を出していました。駅周辺はどこも、「はずれ」が多いようです。

 それはともかく、ちゃんとした厨房施設のある食堂で、生麺を調理して提供すると、けっこうな味になることがわかります。施設だけでなく、サービスの心持ちなどによっても、味に相当な差が出るものかと思いました。

 そして急に、昼時に時間がなくなってコンビニで買ったそば弁当の味。ひところと比べて、ずいぶん食べやすくなっているのに感心しました。ツユをかけるスタイルのも、ざるそばのようにつけ汁で食べるのも、やはり技術の進歩があるようです。

 信州の夏の傾向でしょうか。コンビニでもスーパーでも、そば弁当やそばサラダを売る時代です。手打ち蕎麦の方が比重が低くなってきたのかしら、と気になります…。

… 2010年07月30日・記| trackback (0)

 

乾麺のバラエティ―「夏の蕎麦」異変?(3)

 7月に入って、信州は観光客が増えてきたようです。そんな長野駅前の店で──

 久しぶりに入ったそば屋。少し雰囲気が変わったような気がしました。静かで、お客さんの会話がほとんど聞こえないのです。よくある、「食べさせて頂く」というほどの気取った店ではありません。

 運ばれてきた蕎麦を一口食べてみて納得しました。いかにもの、生麺か乾麺をゆでて出している、そんな口ざわりです。あらら。食べすすんでいるうちに、これなら家で買ってきた乾麺をゆでて食べるのと同じじゃないか、参ったなあ、と思いました。客の口数が減るのは、明らかに美味しいとは言えないからなのでしょう、値段はいいのですから。

 スーパーなどで日常的に売られている乾麺は、製造技術が向上し品質がよくなってきたようです。そして最近は少し種類が増えたように見受けます。

 つまり、従来は普通の乾麺はソバ粉が3割のものが中心でした。最近は「五割入り」をうたう品、なかには七割、八割を強調するのも増えました。また全国チェーンのスーパーには他県産の乾麺も多くなってきました。あるいは、ストアブランドの干し蕎麦も健在です。

 信州は全国的にも食品工業が発達しており、粉屋・製麺所も多いことから、多くの蕎麦(乾麺)が生産されています。県外の業者と組んで生産・販売を広くやっている工場も時おり耳にします。

 それでも、商品のバラエティが増えたのは喜ばしいことです。競いあって美味しい商品を売り出してくれれば、消費者の方に選んで食べる楽しみが増えるというものです。

 たまたま「五割蕎麦」という乾麺を家で食べてみましたが、「三割」というのとの違いがよくわかりません。それでも「調理方法」などに従って丁寧に作ると、まあ何とか食べられる味です。製造技術の進歩がうかがえました。

 お中元シーズンもピークを越えたかもしれませんが、大型スーパーや百貨店などの売り場には贈答品として信州名物の干し蕎麦(乾麺)が多く並びます。もちろん半生麺も混じります。オヤマボクチ入りなどという新顔も見かけました。

 贈る側とすれば、有名ブランドのもの、あるいは手打ちそばの店として名前を売っている商品が目安でしょうか。こうした「高級品」は以前にいくつか試したことがありますが、品質が特にすぐれているとは思えませんでした。

 お中元の贈り物としてみると、信州の乾麺はまだ、日本各地のソウメンのような全国的な・季節的なブランド化は進んでないようです。調理も含めた味のレベルアップが課題なのかもしれません。

 それかあらぬか、今年はいつもより並ぶ蕎麦の商品(セット)が少ないように見えました。乾麺の世界でも“蕎麦離れ”が起きているのでしょうか?

… 2010年07月16日・記| trackback (0)

 

味と客足のバラツキが広がったか 「夏の蕎麦」異変?(2)

 この6月前半は喜んで食べ歩きをしていたのですが、中旬になったら、急にあちこちの店で、味が落ちてきたのがわかりました。材料の質が変わってきたのかしら、残っていた良質な国産粉が切れてきたのでしょうか。

 そう思って注意をしていると、店により味のバラツキが急に大きくなってきたように感じました。

 比較で言えば、相変わらずそれなりに美味しい蕎麦を提供しているのは、自分で材料=玄ソバを確保している店のようです。粉屋から供給されている店は、少し苦しくなってきたように見受けます。

 そして、昼食時など、おや、と思うことが多くなりました。それは客足のバラツキです。お客さんが減ってきたのはどこでも言いますが。

 混んでいてやっと座れたと思って食べていたら、勘定をするころにはガラガラにすいてしまう店が目立ちます。あるいは、ちょっと遅い時間に入ったら妙にすいている有名店も。時間帯によりバラツキが大きいのです。

 また、日によって、曜日によって大きく違う場合がある、とも聞きます。つまり客足が平均しないで波がある、それも極端に、というのです。そういえば休日には行列が出来るのに、平日には楽に食べられる店も見かけます。

 こうした信州のそば屋の傾向は、蕎麦ブームが下火になったというだけでなく、他の分野でもあるようです。ラーメン屋、ファミリーレストランなどの庶民的な店が苦戦している話はよく聞きます。外食産業全体が、以前とは傾向が変わってきたのかもしれません。

 そば屋の経営は、だんだんむずかしくなっていくのでしょうか…。

 夏場は信州は観光シーズンです、そば屋も大いに稼ぎたいところでしょうが、今年はどうなるのか、気がかりです。

… 2010年07月06日・記| trackback (0)

 

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