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製粉の歩留りもよくないか ソバ凶作の実情と影響(5)

 昨年のソバ凶作の問題点の一つは、製粉の「歩留り(ぶどまり)」です。

 ソバの実=玄ソバは三角錐の形をしていますが、豊作の時には大体、肥った、丸みを帯びた粒です。これが凶作だとやせ細った貧弱な粒になってしまいます。あるいは、ソバの実は1本の木でも成熟に段差があるのが普通ですので、収穫した中に丸い粒とやせた粒が混じりあうことも普通にあります。

 歩留りとは、玄ソバから粉になる率(%)。つまり、黒い(茶色の)皮を取り除き、食べられる粉になる比率です。豊作型だと歩留りがよくなる、凶作型だと歩留りが悪い、ということになります。

 歩留りは一般的に80%から60%だとされています。幅があるのは、玄ソバの状態によって違いが出るからのようです。

 ある製粉会社のホームページを見ていたら、製粉を委託された場合の歩留りをおよそ70%だとしてありました。大よその見当がつきます。

 それで昨年のソバの出来について、自家製粉をしているいくつかのそば屋に聞いてみたのですが。比較すれば、たとえば同じ重量の袋に、いつもよりずっと嵩(かさ)が多かったというのです。つまりはやせた粒が多かったというわけです。

 そして歩留りはどうかといえば、やはり、というべきか、相当に悪いようです。産地や農家によっても違いはあるようですが、大まかな数字では例年の10%以上少ないといいます。

 全国の玄ソバの収穫量が平年の60%程度だったとして、粉になるのはまた少し減少して、およそ50%ほどだったのではないか、と推測できるわけです。

 つまりは、国内産の使える量は半分しかない、ということになります。

 もう一つ気になる統計があります。農林水産省の同じ統計発表についていたものですが、「そばの輸入量の推移」というグラフ(財務省『貿易統計』)。ここ数年(平成20年まで)、ソバの輸入量が明らかに減少しているのです。

 ソバの輸入量は昭和50年代に急増し、5万トンから平成12年には9万トンになっています。そこから徐々に減ってきて、平成19年には約7万トンでした(貿易統計)。

 国内産と海外産の比較で「二八そば」とよく言われたものです。国内産は2割しかないよ、というわけです。しかし近年は国内産は20%を超えるようになっています。単純に輸入量が減ったからなのですが。去年は凶作がわかってから輸入量が増えたかどうかはわかりません、まだ数字は発表になっていないようですが。

 国別では中国産の減少が目立っているのですが、中国に次いで多いのがアメリカ産。ジワジワと比率が増えているようです。中国の栽培状況がよくわかりませんが、気候の変化によって収穫量が減ったと言われます。しかし一方で、中国でも儲かる農業をめざして他の作物への転換が進み、ソバ栽培そのものが減ってきている、という話も聞きます。今後も増える可能性はあまりないのかもしれません。

 そういえば、長野市近郊の道の駅で、ソバ粉の説明に次のような注意書きがあって興味を引きました。

 「ブレンドそば粉 国内産入(国内産3割 北米産7割)/そばの不作による原料不足のため国内産10割がご用意できません。/1kg 980円(税込)」

 この価格が高いのか安いのか。考えさせられました。

 国産は手に入りにくく価格がはね上がり、輸入ものとの差がますます大きくなって、こうした表現になっているのでしょう…。

 輸入量を見れば、日本全体でソバの使用量が大幅に減る傾向らしいというのがわかります。ソバ粉の供給状況が、今年は相当に深刻になっているのかしら、と心配します…。

… 2010年03月12日・記| trackback (0)

 

発表された統計数字から ソバ凶作の実情と影響(4)

 2月1日付で、農水省の平成21年産ソバの栽培面積・収穫量の統計が出ました。大方の予想通り、相当な凶作でした。主な数字をひろってみます。

◆農林水産統計 (農林水産省 平成22年2月1日公表) (ネットにアップしたのは最近)

平成21年産そばの作付面積(全国)
 作付面積(ha)前年比(ha)(内)田(ha)(内)畑(ha)
全 国45,400△1,90031,30014,200
北海道14,900△1,6007,6407,220
長野県2,680201,850831
(以下、略)


平成21年産そばの収穫量(主産県)
 作付面積
(ha)
10a当り収量
(kg)
収穫量
(t)
作付面積(ha)
(前年比)
収穫量(t)
(前年比)
10a当り収量
(平年比)
主産県計37,8004015,300△2,00060%
北海道14,900477,000△1,600△4,40057%
長野県2,680501,34020△79063%
山形県4,090271,100170△51056%
茨城県2,260481,080△20△62056%
福井県2,730391,06020△36070%
福島県3,19030971△110△93952%
栃木県1,6904982860△16655%
(以下、略)


(数年前から、全国統計は数字が抜ける県が出来て、特に収穫量は「主産県」(「主産県とは、調査年の前年の作付面積が全国の作付面積のおおむね80%を占めるまでの都道府県及び…」ということで、今回は11道県)のみが掲載されるようになりました。また県内でいえば市町村別の統計数字が出なくなっています。ソバは「雑穀」に分類され、統計上でも軽視されるような傾向があって淋しいのですが。)
 特徴を少し検討してみます。

 作付面積では、全国で45,400ha。これは前年に比べて1,900ha減っています。主に北海道で1,600ha減少したのが大きかったのです。収穫量は、主産県で平年比60%とされています。全国の総量はわかりませんが、要するに4割減の収穫しかなかったというわけです。

 農水省の分析では、「10a当たり収量」として、「主産県の10a当たり収量は40kgで、10a当たり平均収量対比は60%であった。これは、北海道において7月中旬の低温、日照不足及び多雨による湿害が発生したこと等に加え、福島県等において7月下旬から8月上旬の降雨による発芽不良等により成育が抑制されたためである。」と記しています。

 県別では、北海道が平年比57%の出来。ほぼ半減といっていいでしょう。長野県は平年比63%で、他県に比べればまだいい方です。それにしても大幅な減産、大凶作と言えます。近ごろ有名になってきた東北や関東のそば処も、凶作に苦悩していることと思います。

(これらの数字等は、インターネットで農水省の農林水産統計を見ると出ています。)

 ここでは県や全国の数字が出てきただけです。実際の田畑の状況は、全滅に近い場所から、ほとんど例年と変わらない地点までいろいろ。各地の実際の収穫量は、細かくは相当に開きがあることでしょう。厳密な収量は、本当はよくわからない=表に出て来にくいのが実情かしら、とも思います。

 不作の原因、要因の一つとしては、長雨・湿害が水田転作のソバ栽培に顕著に現われたのではないか、と思うのですが、その分析はまだなされていないようです。あるいは、種蒔きの時期の変化も影響があるような気がしています。天候の変異に対する対応力にも問題があったのかしら、と危惧しているのですが、そのへんの細かい検討は、これからの課題かもしれません。

 いずれにしろ、凶作が蕎麦(そば切り)の品質・味に直結しますので、気にかかることしきりです。


… 2010年03月02日・記| trackback (0)

 

かけそばの不思議 門前そば食べ歩きから(2)

 「長野灯明まつり」に合わせて行なわれた、第5回「門前そば屋のそば食いねえ」というイベント。2月6日~14日の間に、門前そばの会加盟13店(今年は12店)を食べ歩いてスタンプをついてもらい、その数によって割引きサービスをしてもらえる、という恒例の催しです。

 灯明まつりに合わせていて、夕方5時からは「半ざるそば」「半かけそば」(いずれも300円)というメニューが登場して、数をこなすのに便利です。普通の量の半分ほどの蕎麦を食べるのですから、一晩にいくつも回れるわけです。

 思うところがあって、今回は「半かけそば」ばかり食べ歩いてみました。気がついたら、半ざるそばの方を食べる客が圧倒的に多かったように見受けたのですが。

 温かいかけそばの類いは、麺がやわらかいこともあって、お腹にやさしいような気がします。一方では蕎麦の旨さよりも、ツユ(汁)の味が先にくるようで、ざる(もり、セイロ)とは味わいが違ってきます。

 参加した12店を比べてみると、ざるそばだと味に相当の開きがあるのですが、面白いことにかけそばだと、あまり差を感じないで済みました。つまり、かけそばは、うるさいことを言わなければ、何とかスルスルと食べることが出来そうなのです。

 別の見方をすれば、ざるそばで美味しいと評判がいい店でも、かけそばでは良さが発揮できないでいる、という側面も出てきます。そんな店を、今回はいくつか体験しました。

 そういえば昔、善光寺周辺の店で、女性たちが温かい「天ぷらそば」を注文するのを見かけて、ああ、この店なら無難な選択だなあ、と感心した覚えがあります。かけそばで、なおかつ天ぷらが入れば、少しくらい蕎麦自体が不味くても、全体としては美味しく食べられるだろうなあ、と。

 つまりは、ざるそばの味が怪しいと思ったら、かけそば、あるいは温かい天ぷらそばなんかを食べると無難なのでしょう。

 いや、後になって、かけそばでも無難というより、ひどい味の店がいくつかあって、これではちょっと困るなあ、とも思いました。個人の営業に横から口を挟むわけにもいかず、直すことは出来ないのでしょうが。善光寺観光、そして信州そばにとって不幸なことにならないといいのですが…。

 考えさせる結果でした。

… 2010年02月24日・記| trackback (0)

 

そば屋にも外国人が増えた 門前そば食べ歩きから(1)

 今年も長野市善光寺では第7回「長野灯明まつり」が華やかに開かれました。そしてこの催しに合わせて、恒例の「門前そば」の食べ歩きのイベントが開かれました。

 初日の6日(土曜日)にのぞいてみたのですが、雪が舞う寒い日だったせいか、灯明まつりの観客が少なかったのが気になりました。そば屋の入りも少ないようで、待たずに食べられるのがありがたかったです。

 期間の途中で聞いた話では、近所の飲食店の主人が、灯明まつり自体への見物人が今年は激減した、と嘆いていました。この催しもそろそろ曲り角なのかもしれないなあ、と思ったものです。

 そば屋でも、今年はお客さんが少ないです、と知り合いの内儀さんがつぶやいていた言葉が印象に残ります。確かに、先を争って食べ歩く姿は、今年はあまり目立ちませんでした。人気がだいぶ落ちたのでしょうか…。

 加盟している13店舗(今回は12店)のスタンプラリーでは、完全制覇すると先着順に風呂敷がもらえる、という特典があります。これも割と遅くまで残ったように見受けられました。

 そして最後の土曜日の13日は、天気がよかったためか、たいへんなにぎわいを見せていました。参道は通り抜けるのがむずかしいほどの人込みになって。

 13日の混雑する人込みの中では、外国人の観光客がかなり目立ちます。そしてそば屋にも外国人客がチラホラ見かけて感心しました。

 ある店では、言葉が通じないらしくて、イライラした客がすぐ席を立って出ていってしまう様子を目のあたりにしました。給仕する若い女性が、英語も話さず、嫌々と身ぶりだけで応対していたのが気になりました。あんな態度では、日本人だって嫌になるなあ、と思ったものです。この店では、後から来た別の外国人にもほとんど言葉では対応できず、何とか注文をとっていましたが、希望通りの品が運ばれたかどうか。相当にいい加減な応接ぶりに遠くからハラハラして見ていたものです。この店はふだんも、味とサービスにいつも後味の悪い思いをしているのですが。

 昔から言われる「善光寺商法」がまだ生きているのだなあ、とがっくりきたものでした。

 とはいえ他のそば屋では、数人の外国人が楽しそうに食べている姿を見かけてホッとしました。店によっていろいろなパターンがあるようでした。

 観光地としての善光寺は圧倒的な人気のポイント。昼間などはよく外国人を見かけます。それでもこんな夜のイベントにも多くの外国人が見えるのは、やはり時代かなあ、と思います。

 そして食べるものは、名物の蕎麦。これが不味い、店員の対応がひどい、となると、日本人だって印象を悪くして帰ることになります。信州観光にとって、大きなマイナスのように思うのですが、どうでしょうか。

 そんなそば屋ばかりでないことは承知しています。それでも自然に、混む店と人気のない店とが相当に開きがあるのがわかります。

 灯明まつりの方はともかく、こうした事態を見ていると、門前そばのイベントが人気が落ちてきたらしいのが理解できます。日ごろの商売も問われているのでしょう、きっと。

… 2010年02月15日・記| trackback (0)

 

店頭の表示が消えて ソバ凶作の実情と影響(3)

 国産ソバ凶作を受けて、長野市内で12月のうちにいくつか見かけた、そば屋の店頭の表示。どことなくあわただしく、びっくりしながら対策に苦慮しているようでした。ふだんから地粉を強調している店ばかりです。

 たとえばある店は、単純に「地物が全くの品薄高騰状態」として、北海道産を混じえる、と表示してありました。食べてみたら、蕎麦の味自体は、以前とは違っては見えませんでしたが。

 別の店では、長く書いた貼り紙を掲示していて、凶作の状況を伝えながら、やはり北海道産を主とする、と書いていました。場合によっては値上げする、あるいは販売中止となるかもしれない、とも記してあります。相当に覚悟していることがうかがえます。

 またある店では、近郊農村からの仕入れが半分になってしまい、北海道産などをブレンドして使う、としていました。食べてみて、以前からそうですが、地粉を使うと称する割には味は大したことがなかったのですが。

 結局は材料のソバ粉の産地について、変更するとか、粉の割合を変えるといった表現がほとんどです。それにしても、地粉にこだわる店にとっては、たいへん大きなショックだったことがわかります。

 味の傾向で言えば……地粉であれ北海道産であれ、新ソバ(新粉)の材料自体が品質の落ちるものが多かったのが今回の凶作の特色です。それでも、大した味でない新粉であっても、さすが、というくらい、終わりまで変わらない味の底力を感じることはありましたが。

 北海道でも凶作で、全国から奪い合いがあったはず。県内では(県外からも?)「安曇野産」がよく登場します。安曇野でそれほど大量に収穫できたとは見えなかったのですが…。

 そんな感想を抱きながら見ていたのですが、さすがに大晦日と正月を経過する中で、こうした店頭の表示はほとんど消えてしまいました。後日の参考のためにと、遅まきながら記録しておきました。

 今のうちはいいのですが、春から夏にかけて味ががくんと落ちた時に、凶作を知らなかったお客さんにどう対処するか、気になりました。

… 2010年02月01日・記| trackback (0)

 

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